被相続人が亡くなり、相続が開始すると、被相続人が所有していた遺産のうち不動産などは、相続人が共有していることになります。このような共有を遺産共有と呼ぶことがあります。
相続した不動産が共有ですと、不動産を処分するのが難しかったり、相続問題が解決しないままになってしまいますから、通常は、共有解消のために遺産分割協議を行います。そして、遺産共有の場合、相続人間での遺産分割協議が上手くいかない場合、遺産分割調停や遺産分割審判を家庭裁判所に申し立てることになります。
ところが、遺産共有以外の普通の共有の場合に、家庭裁判所は共有物分割を取り扱ってくれません。
その場合、地方裁判所に訴訟を申し立てることになります。遺産共有か、普通の共有かで訴えるべき裁判所が違うのです。
相続との関係で共有状態が発生するのは、主として遺留分減殺請求をした場合です。相続財産に遺産が含まれている相続の場合に遺留分減殺請求をすると最終的に不動産が共有状態になります。
ややこしい話ですが、この場合の共有は遺産共有ではなく、普通の共有だということになっています。ですので、遺留分減殺請求が成立した後、不動産については更に共有物分割請求もしなければならない場合があります。
なお、相続法が改正されて、令和元年7月1日以降に発生する相続については、遺留分については共有ではなく遺留分額を侵害された部分について金銭を請求する制度に変わりました。令和元年7月1日以降の遺留分についての共有の問題はなくなります。
以上を前提にして、ここでは、遺産分割ではなく、通常の共有の場合の共有物分割の説明をしたいと思います。
共有物分割請求をするには、最初に共有物分割協議をする必要があります。
相談者の中には散々話し合いをしても埒があかなかったから、すぐに訴訟、競売をしてほしいという方もおられます。
ですが、法律では「共有者間に協議が調わないときは、その分割を裁判所に請求出来る」と規定されています。
訴訟提起の要件として「共有者間に協議が調わない」というものがあるため、共有物分割協議をせずに訴訟を提起すると、訴訟提起の要件がないから共有物分割訴訟はみとめられないなどと相手方から言われるおそれがあります。
このように、訴訟提起の要件を備えるためにも、最初に共有部部分割協議をする必要があります。
法律では共有物分割協議の方法についての規定はありません。
実際に会って話し合いをする方法でも電話でやりとりする方法でも手紙や電子メールでやりとりをする方法でもかまいません。
ですが、訴訟になったときに、相手方から「共有者間に協議が調わない」という要件を備えていないから共有物分割訴訟ができないなどと言われないためにも、最初に配達証明付きの内容証明郵便で共有物分割協議の申入をすべきです。これは共有者全員に送付する必要があります。
そのような方法をとれば、共有物分割協議の申入をしたことについて証拠で証明することができますので、一定期間経過しても共有物分割協議が成立していなければ、「共有者間に協議が調わない」の要件を備えたと証明することができ、相手方から無用の反論を受けずにすみます。
共有物分割協議に申入をして、相手から何の応答もなかった場合、話し合いをしたが話し合いがまとまらなかった場合は「共有者間に協議が調わない」ことになるので共有物分割訴訟を起こすことができます。
共有物分割協議が調わなければ、共有物分割訴訟を提起することができます。
共有者全員を当事者にする必要があります。
裁判所は被告となる相手方のいずれかの住所地または不動産所在地を管轄する地方裁判所に提起することになります。不動産を対象とする訴訟ですので簡易裁判所に訴訟提起することはできません。
請求の趣旨で求める判決の内容を記載します。競売を命じる判決を求めるのか、代償分割の判決を求めるのか、現物分割を求めるのかのいずれかです。
通常の訴訟ですと、原告が求めた請求の当否を判断すればよいのですが、共有物分割訴訟の場合は共有物の分け方を決める裁判ですので、そもそも共有物分割請求権がない場合や共有物分割請求権があってもこれを行使するのが権利濫用にあたる場合以外は、何らかの方法で裁判所は共有物分割の方法を決めざるを得ません。ですので当事者が請求したのとは異なる内容の分割方法を命じる判決を出すことも出来ます。
共有物分割協議をした後、共有物分割訴訟において、共有不動産の分け方が決まらない場合に競売を命じる判決が出されることがあります。
競売を命じる判決が出された場合に、その判決正本を添付した上で競売申立をすることができます。これは共有不動産全体に対する競売になります。このように共有不動産の処分に反対している持分権利者がいても競売を命じる判決に基づいて競売手続を行えば、共有持分権を失うことになります。
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